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芥川龍之介の「偸盗」がおすすめ小説です

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あなたが良いと思った小説と著者名を教えてください

芥川龍之介の「偸盗」です。

なぜ、その小説を読むことになったのでしょうか?

 私はこの「偸盗」をゼミの研究課題で読み、発表し、それから卒論もこの「偸盗」について書きました。

その小説を読んで良かったと思う感想

 感想は、初めて読んだときに単純に楽しめました。完全にこの話は現代でいうハードボイルド小説です、私はその頃はそっちのハードボイルド系の話に傾倒していました。好きだったドラマは、年代は私が生まれる前のドラマでしたが、探偵物語、そのドラマと共通する点の多かったキムタクのドラマ「ギフト」、踊る大捜査線なんかも好きでした。  映画もパルプフィクションなどのギャングもの、アクション系が好きだったように思います。そうしたアンダーグランド的な世界が書かれているものにとても興味を惹かれていた時期で、日本の生ぬるいドラマなんかは最も嫌っていたかもしれません。    

 

芥川の小説はなんとなく好きだったので、ゼミを専攻し、その際に一緒のパートナーになった女性とこの話を読みました。こんな頃から普通に面白い小説を書ける人がいたのかと感嘆したことを覚えています。話の内容としては少々荒っぽい部分もありますが、そこがこの話の疾走感を醸し出していると私は考えます。  題材は言ってしまえばメリメの「カルメン」です、これは悲劇のというか悪女を書いた王道作品ですね、卒論を書く際に私も読みましたが、やっぱり面白いです、それはオリジナルにまさるものはないと言われてしまえばそれで終わりですが、偸盗はこの「カルメン」とても上手にアレンジしなおしています。  時代背景は平安時代なのでしょうか、貴族の家に盗みには入る窃盗団の一味がこの物語を作り出しています。

 

女頭の沙金はカルメン、もともと牢の番をしていた太郎はカルメンに出てくる隻目の男で、次郎はカルメンに惚れて次第に破滅の道へと堕ちていくドンホセです。  偸盗の面白さは簡単に言えばどろどろとした人間関係です。この窃盗団の中には猪熊のばばとその夫である爺がいるのですが、彼らがまたなんというかそのキャラクターぶりがとても日本的なので一層この小説を読んでいて親近感をもたらしてくれます。  そんな中に知恵おくれの娘が一人いて、彼女は爺に犯されたりしています。そこへ太郎が止めに入り、爺と殺し合いに発展しそうになったり、兄弟で同じ女、沙金に惚れてしまいお互いにそれぞれ罪悪感をもっていたり、爺にさんざんひどいことをされていても婆は爺を助けたりと、このころの芥川の作品に出てくるキャラクターはどこか迷いなく書かれている感じがしてオリジナルとはまた違った味があります。  

 

オリジナルではドンホセは完全に堕ちていきます、彼はカルメンという魔性の女に惚れたがために彼に人生をカルメンに奪われて終わっていきます。しかし、この「偸盗」はこの魔性の女である沙金をドンホセが一人ではなく、隻目の男と混ざり合い、二人の親密な兄弟として生まれ変わることによってカルメンである沙金を最後に成敗してみせます。  もちろんそんな展開を幼稚に感じるひともいるかもしれませんが、そこが芥川の小説の面白いところです、彼は単純に面白いものを書こうという意志のものもとに、彼一流の料理人の腕によって外国文学を料理してくれます。  

 

それでなければあんなに上手にまた巧みに話を書き換えることはできないでしょう。時代を近代のスペインから貴族が暮らすどこか平凡な感じのする平安時代に置き換え、窃盗団が貴族の家に押し入る描写などは時代劇のチャンバラを見ているようで楽しめます。  のちの芥川の作品はどこか報われないというか、何かの迷路を彷徨っていくような主人公を題材にした話が増えていくように私は思いますが、このころの、初期の芥川の作品は夏目漱石とまではいきませんが、ある種の痛快さがあると私はおもいます。  

その小説がオススメだと思う方は誰?

 やはりハードボイルドな話の好きな方によんでもらえたらと思います。単純に面白いと思うものが好きな人におすすめです、芥川の作品にはどこか考えさせられる作品も多いかもしれませんが、この小説は完全に、言われている言葉を使わせてもらって表現するのなら王朝エンターテイメントだと思います。

これからその小説を読もうと思っている方へのアドバイス

 芥川の小説は、言葉が大正時代のものなので難しい、読んでいても意味がわからないといったことも聞かれることがありますが、正直わからないところをすっ飛ばして読んだとしても楽しめる内容であることは間違いないと思います。

 

カンタンな自己紹介・プロフィール

 私は神奈川県に住む33歳の男です。職業はパートで普段は某大型スーパーの青果部門で働いています。学生時代は文学部だったのですが、今思えばその時期にしっかりと本を読みこめばよかったかなとも思います。