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心の中の言いたいことが文章化されて読み応えがある小説「ゴールデンタイム 春にしてブラックアウト」

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あなたが良いと思った小説と著者名を教えてください

私が良いと思った小説は、竹宮ゆゆこさんが執筆した「ゴールデンタイム 春にしてブラックアウト」です。

なぜ、その小説を読むことになったのでしょうか?

私は今まで文芸書ばかり好んで読んでいたのですが、ライトノベルを書店で見かけるたびに内容が薄いものが多いのではと思っていました。 けれど、それは食わず嫌いのような読まず嫌いであったのだと今では感じています。 この「ゴールデンタイム 春にしてブラックアウト」を店頭でパラパラとめくった時に、ライトノベルなのに話に深みがありそうだなと思いました。 そして、そのまま購入したのですが、帰りの電車の中で読むより、家でじっくり読みたい、そんな気分で高揚していました。

その小説を読んで良かったと思う感想

この小説はすごく描写が濃厚だなと思いますし、会話文より描写が好きな私にはうってつけでした。 ぱっと読んだだけでは通り過ぎてしまいますが、じっくり読めば読むほど頭の中で映像がリアルに浮かんでくるのです。 主人公は田舎の静岡から出てきた万里という男の子なのですが、彼は高校生の頃に記憶をなくしてしまい、今はそのことに寂しさを覚えながらも、東京の大学で新しい自分を見つけようとしています。

 

この主人公は、地味で情けないのですが、そういうところが共感が持てました。 まわりの大学生には金持ちの美女香子と彼女の幼なじみのイケメン光央という、いわゆる万里とは住む世界が違う人たちで、私自身も自分より優れた人たちの中にいることが多いので、思わず万里に感情移入してしまいます。 それから、万里は華やかな大学生になりたいという願望を叶えたいとするのですが、巻き込まれるのは厄介な問題ばかりです。

 

こういうところは読んでいる方としてはストレスがかかりますが、けれど少しずつまわりから認められ始めたり、遠い存在だと感じていた香子の人間味があるところを知っていったりと、状況が変わっていきます。 同じだなと思うのは私も普段から認められたい願望があっても、まわりはなかなか分かってくれないという問題にぶつかっています。

 

そのため、万里のように大きなアピールをしなくてもいつか気づいてくれる、そんな人たちに出会えるという喜びを感じて、読んでいて報われたような気がして良かったなと思います。 人生観が万里にも、香子にも、光央にもあって、それぞれがぶれずに一冊の中で生き生きと描かれています。 流されないということは、今の世の中難しいかもしれませんが、彼らのような姿を見ていると、自然と今のままでいることに誇りを持てます。

その小説がオススメだと思う方は誰?

大学生の話ですが、むしろ大学生より少し上の年代の人の方が、この本を深く味わえるかもしれません。 ライトノベルを普段読まない文芸書籍派の人にもおすすめしたいと感じます。 大学生の話ということもあり、一見きらきらしている内容かと思いきや、そこの中にあるのは生き方というものだと思いました。 竹宮ゆゆこさんが書く心理描写は厚みがあり、読み応えがあります。 そう、それ言いたかったというような表現もあり、語彙が豊富なこともありますがそれ以上に女性らしい繊細な文章が読んでいて清々しいです。

 

万里と同じように漠然とした不安を抱えている人は、彼らの生き方に共感したり、自己投影できるのではないかなと思いました。 だから、就活生や自分さがしをしている人には深く胸につきささる何かがあるかもしれません。 読み応えはありますが、そんなに気負いをしなくても読んでいけます。 一回だけでなく何回も読み返す方が、より面白いと感じることができるので、リラックスする時間がある人のほうがきちんと内容を把握できるかもしれません。

これからその小説を読もうと思っている方へのアドバイス

万里と香子、光央の恋愛関係の部分もありますが、それはあまり期待しない方がいいかもしれません。 恋愛メインというより、それは付加価値というくらいにあっさりしています。 けれど、人生観や心理描写に焦点を当ててページをめくり続けると、コメディの部分も多々ありますが、それ以上にためになるまたはスカッとするシーンもあります。

 

深い部分を想像すると、あまり本文中に書かれていないところもあり、すべて書かれてイマジネーションできない小説はあまり好きじゃないという人には向いていますが、全部気持ちも行動も把握したいという人には、あまり向いていないかもしれません。 あとハイテンションコメディの側面もありますが、展開はあまり激しくなく、前半は特にスローテンポで進みます。

 

個性が強い作品なので、好き嫌いが分かれるかもしれませんので、自分が好きな作品のタイプから外れている人は少し退屈かもしれません。 けれど、ゆったりペースで余韻があるような雰囲気、そして描写が多めの小説が大丈夫な人は私と同じように読んで良かったと思えるのではないでしょうか。

 

カンタンな自己紹介・プロフィール

いつも部屋にはこれから読みたい本が山積みになるほどの読書好きの女子です。