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キューブリックの異色の反戦映画「突撃」

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あなたが良いと思った洋画を教えてください

突撃

なぜ、その洋画が良いと思ったのでしょうか?

「これは絶対におかしい」と思う事でも、まかり通ってしまう事があると思う。 「そんな事、絶対納得がいかない」と思う、理不尽な事でもまかり通ってしまう事があると思う。 そんな事では本当はいけないと思う。 スタンリーキューブリック監督『突撃』を観ながら私はそう思いました。 この映画は反戦映画ですが、厳密に言えば、軍の内部で起こる不条理な事を描いているのかなと思います。兵士たちは戦争など本当はやりたがっていない、ただ軍の一部の上層部の人間の昇進欲の為に、悲劇は繰り返されていると言う事が表現されているのだなと、私は捉えました。

 

最初のうちは、ただぼんやりとこの作品を観ていましたが、しばらく見続けていくと、ハッとさせられるシーンが何度もあり、徐々にストーリーに引き込まれていきます。 ダックス大佐(カークダグラス)は正義感あふれる紳士です。あのような厳しい状況の中、最後まであきらめずに自分が正しいと思った事を主張し続け、邪悪な権力者と戦っているダックス大佐を観ていると、実際にこういう事が実行できる人は、本当に少ないんだろうなぁと思いました。軍事裁判で大佐の主張している事は「ごく当たり前の」「正しい事」な筈なのですが、将軍らに認められず、観ていても静かな怒りが込み上げてきます。それでも、将軍らの圧力にも屈せず、勇気ある発言をたくさんしていて、彼は本当に偉いです。 この映画を観ていて思うのはやはり、納得のいかない事と言うのは、裏側に何か事情があるのだろうなと言う事です。

 

だからそれを無視しては、いけないのだと思いました。 仏軍将軍の「見方側の部隊を砲撃する」と言う、頭の悪い異常な判断の裏側に隠されているのは、結局は昇進欲なのでしょう。さすがに、これは砲兵隊の指揮官が文書での命令を要求し、要請に応じなかった為、砲撃されなかったですが、「何と言う事だ」と私は思いました。これを見る限り、昇進欲を持っている将軍はたいがいの事はするということでしょうか。 あまりにも無謀な作戦に、怖気づく兵士がいるのもリアルだと思います。突撃しない兵士達に腹を立て、何故もっと戦わないんだと言わんばかりに、3人の軍人を銃殺刑にしようとするミレー将軍らの発言に、正気か?と思いました。そんな事はおかしいと思いました。

 

偉大なるスタンリーキューブリック様のお創りになられた、このストーリーにケチをつけるとするなら、射殺しないで欲しかったです。あのシーンは本当にがっかりしました。大佐もあそこまで頑張ったのに・・・。けれども、だからこそ観る者に、戦争やそれをとりまく物事と、軍隊という組織の不条理さや残酷さの様なものを伝えることが出来るのでしょうね。理不尽な事に対する怒りが、単純に込み上げてきました。非常にショッキングな展開ですが、反戦映画としてやはり素晴らしいと思います。

 

この映画は、戦闘シーンは前半のみで、後半はほとんど軍事裁判に関するシーンという構成になっていて、そのような場面構成で制作されている事がとても面白いと思います。戦闘シーンは短くても反戦映画は作れるのだ、と分かりました。古い映画ですが、非常に新しい考え方だと思います。スタンリーキューブリック監督がこのような作品を撮った事は、非常に興味深いです。

その洋画がオススメだと思う方は誰?

この映画は、いろんな事を考えさせてくれますから、なるべく多くの方に観て頂きたいです。例えば、選ばれてしまった3人の兵士の心苦しい描写がありますが、選ばれなかった=助かった兵士たちの描写も興味深いです。彼らは、運悪く選ばれてしまった3人の兵士が不本意に銃殺刑にされるのを黙って見ているしか、方法がないように見えます。これは何かが非常に引っかかります。彼らの中に1人としてこの事態を納得して、受け入れられる人はいないでしょう。

 

あれだけ兵士が大勢いても、あのような結末に導いてしまう。これを「不条理だ」の一言で片づけてしまう事は、私としてはどうも納得がいきません。私たちはスクリーンの外側でこの事態を観ているので、多少なりとも客観的に物事を見ることが出来ます。だから感情移入しながらも、何とでも言う事が出来ますが、じゃあ何故あの兵士達は、何も言わないのでしょうか?逆に私達の、日常生活の中で、似たようなことはないか?と考えてしまいます。

 

あの様な軍隊の中にいるのだからしょうがないと受け入れてしまう、これはとても恐ろしい事の様な気がします。 これらの状況から脱出する方法を、私は仕組みとして理解しておかなければいけないのではないか?と思いました。この様な状況に対しての対処法が無知、であるがゆえに無力、これだけは避けたいと思っています。

これからその洋画を見ようと思っている方へのアドバイス

クライマックスの時に登場するドイツ人歌手は、後にキューブリックの妻になるクリスティアーヌ・ハーランです。印象的なラストシーンです。

 

カンタンな自己紹介・プロフィール

40代前半の女です。デザインをする事や、映画を見る事が大好きなインドア派です。