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読後に余韻を残す作品「ブルータワー」

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あなたが良いと思った小説と著者名を教えてください

石田衣良さんの「ブルータワー」という小説が私のオススメです。石田衣良さんというと普段は池袋や新宿などを舞台とした現実的な作品が多いのですが、ブルータワーはSFとなっており、いつもとは違う石田衣良さんの世界を楽しむことができました。

なぜ、その小説を読むことになったのでしょうか?

私はもともと石田衣良さんの小説の大ファンで、ドラマ化もされた「池袋ウエストゲートパーク」やその他の作品をほとんど読んでいます。そのためこのブルータワーも発売されてすぐに本屋さんで見つけ、石田衣良さんには珍しいSFだということもあり、即購入を決めたのでした。 またこの作品はアメリカ同時多発テロ9・11に触発されて書いたものだそうで、そのタイトルの通りあるタワーが主な舞台となっています。その題材も私にとっては惹かれるものがあり、とにかくまずは読んでみようと思ったのでした。

その小説を読んで良かったと思う感想

タワーマンションに住む病気で余命はわずかだと告げられた中年男の主人公が、200年後の世界にタイムスリップをします。するとその世界では新型インフルエンザが蔓延していて、タワーから外に出ることはできなくなっているのです。そしてそのタワーには選ばれた人間しか住むことはできない、そしてそれ以外の人間は命の危機にさらされながらもタワーの外で暮らすしかないという過酷な状況となっています。 そんな過酷な状況を救うために主人公が奮闘していくのですが、主人公がまず中年のどこにでもいそうな等身大の男性だということに非常に共感します。これがもし正義感の強い主人公気質の若者であればまた違っていたと思うのですが、中年男性だということがすごく身近感じられて、一気に作品世界に引き込まれてしまうのです。 現実の世界では余命はわずか、そしてタイムスリップした先ではその世界を救う役割を与えられているのですが、ずっと200年後の世界に行きっ放しではなく、現在と未来を行ったり来たりしています。それがまた妙にリアルなのです。

 

普通タイムスリップものというとどことなくつじつまが合わなかったり、地に足のついていない展開になりがちですが、このブルータワーはSFでありながらも現実味があり、けっして夢物語ではないんだと思えるのです。実際にこの先の遠くない未来こういうことがあってもおかしくはないのではないかなどと、いろいろ考えさせられる小説となっています。 私はもともと読書が趣味なのですが、読後にこれほどいろいろと考えさせられた作品は他にありません。読後にかなり余韻を残す作品です。 また先の展開が読めないのも魅力の一つです。そのため結構長めの話でありながら、一気に読み進めてしまいます。 とにかく私にはすごく印象に残った小説で、一度読み終わったあとしばらく経つとまた読みたくなっている作品でした。

その小説がオススメだと思う方は誰?

SFのうえにタイムスリップ、そして新型インフルエンザに貧富の格差と扱っている題材はかなり難解ですが、それでも若い方に読んでほしいなと思います。 最近はSFのタイムスリップものや終末思想を扱った小説や漫画などが数多くあり、そのどれもがとても面白いものではあると思いますが、そういったお話とは一味もふた味も違っていて、SFという夢物語でありながらも現実に起こっても決しておかしくはないと思わせる展開となっています。 そのため漫画でSFに慣れ親しんでいる若い世代の方にこそ勧めたい小説です。

 

そしてぜひこの独特の世界観を味わってほしいものだと思います。 そしてそれとは逆にこの作品の主人公である中年男性と同じ世代の男性にもオススメです。この主人公は特別な存在ではなく、どこにでもいる中年男性です。だからこそ一生懸命世界を救おうとしているその姿に感動を覚え、また共感ができるのだと私は思います。都合よく世界を救うのではなく、もがき苦しみながら、そして悩みながら前へ進んでいく主人公には中年男性なら勇気をもらえるのではないかなと感じるのです。 そういったことで若い世代とそれとは逆の中年の男性の方に私はぜひ読んでほしいと思います。

これからその小説を読もうと思っている方へのアドバイス

物語冒頭は少し難しくて入り込みにくいかもしれませんが、読み進めていくうちにいつの間にかその作品世界の虜になってしまう、そんな魅力あふれる作品です。 そして読み終わったあとには、貧富の差や格差社会、そして余命を宣言されたら自分ならどうするだろうかといろんなことを考え、自分なりの答えを見つけることのできる作品となっています。 もちろんそこまで難しく考えなくとも、ただ純粋に楽しめる作品でもあるので、SFはあまり好きでないといった方にも、この作品なら気に入ってもらえるのではないかと思います。

 

カンタンな自己紹介・プロフィール

関西在住の四十代主婦、二人の子供を持つ四人家族です。