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恋愛小説初心者向き『エレGY』

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あなたが良いと思った小説と著者名を教えてください

 『エレGY』泉和良講談社BOX

なぜ、その小説を読むことになったのでしょうか?

 私は基本的に収入が少ないものでして、本は買いません。本を読むのが好きとは言いつつも、漫画と違って小説は高いし、お金を掛けることはしなかったのです。本を読むとしたら近所の図書館をハシゴするというのが当たり前のボンビー生活。しかし、さすがに同じ土地に住んでいると、図書館の棚だけでは足りなくなってきます。いくら本が無限にあっても、自分の好きなジャンルは限られているからです。

 

そんなわけでお金を使うとしたら専らブックオフのワゴンセールでしたが、その105円均一の中でたまたま手に取ったのがこの本でした。  私はちょっと、なんというか講談社BOXのような前衛的かつオシャレな小説には抵抗があって、なるべく関わらないように避けていたんですけど、ものは試しと何冊か買ってみたのが運のつき。そうです。本当に運が付いていました。食わず嫌いはいけないものだと今更ながら実感いたしております。

その小説を読んで良かったと思う感想

 冒頭から序盤にかけて、すんなり入り込めました。殺人事件ばかりを読んでいた私にとっては免疫のない神経が突かれているような感覚かもしれません。とにかく「パンツ」のくだりも他人事とは思えない同情と懐古の念を抱いてしまうほどでしたし。なによりまず驚いたのが「ジスさん」と親しく呼びかけてくるエレGYという少女の存在感。あらすじを目で追っていただけではリアリティの欠片も沸かなかった彼女が、今では「ジスさん」と呼ぶたびにフラッシュバックしてきます。

 

彼女の可愛らしさといったら挿絵なんぞ必要ない。想像だけで我らが男の子なら、いや童貞諸君ならごはん何倍でも食べられるでしょう。  そして読後感。まずは一言、客観的な他人の評価なんてクソ喰らえという名の熱量を私自身がひしひしと全身で感じていました。ふと気がつけば、碁会所の先生が閉店を告げた瞬間「えっ」と声が漏れていましたからね。そうです、主人公の「僕」より先に声を発するほどのめりこんでいたんです。主人公の「僕」に突き放され、エレGYは本当に死のうとして最後のメール出したというあの直後、ファストフード店でのふとした邂逅から本音をぶつけ合うあたりがまさに青春の一言でした。

 

そして2人の和解後には、4年越しのメールとしてエレGYを受け入れるため、他の子をふるという間接的な告白というカッコつけ方も痺れるし素敵すぎる。またそれは小島絵里の最初のメールでもあったわけで、当時は「エレス」と名乗っていたことは調べればわかるわけですよね。駅前広場での特設ライブでは、そのご褒美として約束のキスを交わしていたり。最後はエレGYのプレーノートでP309のように終わる超完結ぶり。ここまでキレイにキッパリ完結する恋物語があるなんて知りませんでした。あっという間に読み終わってみれば、乙一滝本竜彦が絶賛していたのも頷ける作品です。

その小説がオススメだと思う方は誰?

 とりあえず小説は好きだけど、いつも読むのは決まって理系小説ばかり読んでいた人へ。例えば殺人事件や探偵もの、パズルや推理小説といったミステリー系のジャンルばかりで、意外とあんまり恋愛小説には手が伸びていなかった「恋愛小説初心者」にはおススメかもしれません。そして付け加えれば、できれば私のような「ダメ人間」の仲間たちに読んで欲しいですね。しがないフリーウェアゲーム作家の「僕」に対して感情移入が行きやすいというか、それを突き抜けて自己陶酔することは確実です。そしてまた、誰もが一度は感じたことのある「ジスカルドの魔法」に掛かりやすい人はきっとそういう人なのだと思われますからね。

これからその小説を読もうと思っている方へのアドバイス

 他人の意見を怖れてはいけません、読後感の余韻を、ありのままに浸ってそっと本を閉じましょう。決して他人の口外してはいけません。なにせ、こんなものが人生で一番サイコーなんて言ったら絶対友達にばかにされるに違いない。そんな恐怖に全身が震えるかもしれませんから。きっと、こんなに面白いと思ってしまった自分自身がいけないんだ。そう思ったらあなたの価値で勝ちでしょう。そして、あるいは、いや御託はこのくらいにしておきましょう。少しでも自分に自信のないと思ってる人はどうか、騙されたと思って手に取って、そして見事に騙されてください。これは純然たる恋愛小説に間違いないはずです。だからどうか、盲目になることを怖れてはいけません。ちょっとぐらい騙されるぐらいがちょうどいいんです。

 

カンタンな自己紹介・プロフィール

 私は現在、神奈川の古アパートで一人暮らしをしています。高校卒業してから上京して以来ずっとアルバイトで生計を立てている30過ぎのフリーターです。20代はガツガツしていて正社員の道も模索しましたが、30歳の大台を迎えてからは気が楽になり、最近では好きな本を片手に私なりの悠々自適なスローライフを送っています。