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夢のように切ない『シザー・ハンズ』

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あなたが良いと思った洋画を教えてください

私の好きな洋画は『シザー・ハンズ』です。 『シザー・ハンズ』はティム・バートン監督によって撮られた1990年のアメリカ映画で、日本では1991年に公開されました。主役の人造人間エドワードを若き日のジョニー・デップが演じています。

なぜ、その洋画が良いと思ったのでしょうか?

私がシザー・ハンズに惹かれたのは、まずそのカラフルな映像からでした。 まるでおもちゃの街のような、単一のパステルカラーでそれぞれに塗り分けられた家並み。のどかでかわいらしいその街のど真ん中に大きくそびえたつ異様な黒い山と、そこに建てられた中世風のお城。 すべてが浮世離れして、それでいながら子供の落書きか夢のようなキッチュな雰囲気の風景は、物語を忘れてそれだけで一枚の絵画を鑑賞しているような気分で思わず見入ってしまいます。

 

本当にほかには何もない片田舎の街なのですが、あれほど実際に行ってみたいな、と思わせられる場所はほかの映画でもそうそうありません。何でも撮影に使われた家などはすべて実際に使用されていたものだそうで、その裏話にも後から驚いてしまいました。そして撮影時にはすべての住民に家を空けてもらっていたとのことで、その生活感がありながらも現実離れしたイメージがよく出ていたことにも納得がいったものでした。 とにかく隅から隅まで、設計者の意思のようなものが溢れでているような画面作りなのです。 もちろん、それだけではありません。 そこに住んでいる人たちも非常におしゃれというかエキセントリックというか、同様にカラフルな出で立ちでとても街の光景に馴染んでいます。しかしそのようなのどかなイメージの中で、まるで異物のように浮き立っているのが主人公であるエドワードなのです。

 

まずその見た目からして、作品の中で一人だけ非常に浮いています。パンクロッカーのようなぴっちりしたレザースーツに身を包み、鳥の巣のようにモジャモジャに広がった髪、そして真っ白い肌に、手から伸びた長いハサミの爪。 しかし、何より印象的なのはその表情です。 エドワードは山の上の城で孤独に住む発明家によって造られた人造人間でした。しかし博士の死により、それ以来ずっと一人ぼっちで暮らしていました。そこでひょんなことからヒロインの母親に見つかり、初めて山を降りることになるのです。 エドワード自体はそのような特殊な自分の環境や境遇に対して何らかの感情があるわけではありません。いいえ、感情はどうやら確実にその機械の胸にも芽生えているらしいのですが、それをどう捉えたらいいのか、そしてどう表現したらいいのかが分からないのです。その困惑がまさににじみ出たような、つねに眉の下がった顔つきが、どこかひょうきんでありながら、また常に悲哀を身にまとっているようで目が離せません。

 

そしてそれを演ずるジョニー・デップの演技もまた素晴らしいのです。つねにぎこちなく体全体が「どもっている」ような動きで、何とかうまく人とコミュニケーションを取ろうとするのですが、手のハサミも邪魔になりなかなかうまくいきません。 やがて、エドワードは世話になっている家の娘に惹かれていきます。 正直なところ、このキャラクターは最初のころはあまり好きになれるようなキャラクターには設定されていません。若さ特有の、友人たちとのから騒ぎを重視するような生活で、エドワードのことを非常に疎ましく思います。しかし、そのあまりに純粋な姿や行動に触れていくうちに、自分自身が洗われていくように素直な心で自分の気持ちを見つめられるようになっていきます。

 

この変化はある意味で視聴者にも重なっていて、いつのまにか彼女の視線を通してエドワードを見るようになっていくのです。この身も心も美しく洗われていく少女を若きウィノナ・ライダーが演じているところもこの作品のとても魅力的な点です。 さて、こうした魅力的な要素をいっぱい詰め込みながら、やはり今でも強く印象に残っているのはそのストーリーです。思わず声を上げてしまいそうな、そしていつまでも胸の中に余韻が鳴り響くようなその切ない幕切れは、ぜひとも実際に見てほしいと思います。

その洋画がオススメだと思う方は誰?

『シザー・ハンズ』は、絵本のような世界観が好きな人には特に見てほしいと思える作品です。その映像はただ見ているだけでも楽しいですし、どこからどこまでも現実離れした世界でありながら、ただ楽しいだけの世界ではなく、絵本特有の、突然口の中に現実世界の苦味のようなものが混ざりこんでくるような部分も楽しんでもらえると思います。もちろんその苦さもある意味ではとても純粋で、そして美しいものとして描かれているので、決してファンタジー世界にいながらいわゆる「現実に戻される」ような覚めた気分になることはありません。むしろ、ファンタジーの中にこそ現実を見出すような不思議な気持ちになれるのではないでしょうか。そういう意味ではもちろん、決してファンタジーのような夢物語が好きではないといった人たちにも、楽しんでもらえる作品だと思います。 そして人間と人造人間という、(比喩ではなく)決して抱き合うことのできない切ないラブストーリーは、恋物語が好きな人にはきっと強く心に響くのではないでしょうか。

これからその洋画を見ようと思っている方へのアドバイス

この映画は、後に名コンビとなるティム・バートン監督がジョニー・デップを初めて見出した作品です。当時無名だったデップはとにかく演技が下手だったと監督は言っていますが、そこから脱皮しようとする情熱に惹かれたのだとも語っています。その言葉通り、どこか不器用で、しかしだからこそ主人公のエドワードにピッタリともいえるそのオドオドした演技は、個人的には今やすっかり大物となったデップの演技の中でも、一番の仕事だったのではないかと思っています。すでに『パイレーツ・オブ・カリビアン』などでよくジョニー・デップを知っている人も、そのあたりの演技の違いなども確認してみるとまたより面白い見方ができるようになるかもしれません。

 

カンタンな自己紹介・プロフィール

30代後半の男性、自由業です。独身で一人暮らしをしています。