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悲しくて心にしみる小説「神様のボート」

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あなたが良いと思った小説と著者名を教えてください

江國香織 神様のボート

なぜ、その小説を読むことになったのでしょうか?

もともと江國香織は姉が好きで、おもしろいよ、と勧められたのは「きらきらひかる」でした。読んでみたら確かに面白かったので、別のものが読みたいと思って手に取ったのがこの本でした。

その小説を読んで良かったと思う感想

一応ハッピーエンドで終わっているはずなのに、読後も自分の中に漂ってくる寂しさが何とも言えません。 日常ではなかなか起こりえない出来事の中に混ぜられた、どこの家にもありそうなエピソード、そういう一つ一つがじわじわと心にしみてくる話です。

その小説がオススメだと思う方は誰?

ラブストーリーが好きな人はいいと思います。もちろん、ラブストーリーがそんなに好きではなくても、子供の成長についても書かれている話なので、誰でも楽しめると思います。 心に何らかの秘め事があって、今でもそれを抱えている人は、その秘め事が自分の中でわーっと溢れてしまうような作品です。時には自分の感情を開放してしまいたい、そんな風に思っている人にお勧めです。

これからその小説を読もうと思っている方へのアドバイス

主人公と娘は旅がらすです。なぜ旅がらすなのかは、本を読み進めていればすぐに明らかになるのですが、その理由が何とも悲しいです。主人公は何をしていても、常に悲しさ、寂しさがまとわりついている生活を送っています。それはもちろん自分が招いたこととして本人は受け止めていて、本人は一つのこと以外は寂しいとは思っていないのかもしれません。その寂しさは、普通の生活を送っている場合ではなかなか体験することのない種類の寂しさだとは思いますが、似たような寂しさは大人になれば誰しも一つは持っているものだと思います。そういう普段は自分の心の奥に閉じ込めているような寂しさをえぐり出されるような作品です。

 

私は実際に何度もこの作品を読み返していますが、読み返すたびに、心の底に蓋をしてしっかり閉じ込めているある寂しさが全開になってしまい、読後2,3日はその寂しさを抑えるのに大変になってしまいます。大変だとわかっていても、それでもなお何度も読み返したくなってしまうという、大人が寂しさを体感するための本だと思います。 ですが、一冊丸ごとそういった寂しさだけで埋められているわけではなく、また別の寂しさもちりばめられています。それは誰しもが体験した「成長」です。子供から思春期を経て、大人へと成長していく過程もまた描かれています。子供のころは自分にとって絶対だった母が、成長してゆくに従って欠陥もある一人の大人なんだと気付き、その親とこの先どのように接していけばいいのか、親との意見が異なっている場合、誰しも悩むところなのではないでしょうか。その子供が親に対して愛情を持っていれば持っているほど、そういった親との接し方、というものに悩むものだと思います。この本に出ている子供もまさにそうで、親をできるだけ傷つけず、でも親の作った世界から出ていこうとする、そこにもまた寂しさが描かれているわけです。

 

子供の成長が描かれていると同時に、主人公の思い出も作中に多くつづられています。家族の中で「姫」のような存在であり、両親にとって宝物としての存在でしかなかった自分。そんな自分が親を悲しませているわけです。子供は多かれ少なかれ、親を失望させることもあると思います。私も様々な局面において、数多くの失望をさせてきたと思います。親が願う通りに生きていけない自分、親から自由になりたいと願う自分、そんな自分がかつて存在していたことも忘れて、自分の子供には自分の願うように生きてほしいと思ってしまう自分。歴史は繰り返す、ではないですが、親と子はそうやってずっと続いていくものなのでしょう。そんな親子の話もつづられています。 寂しさはそこかしこに漂っていますが、旅がらすである親子、移り住んだ土地土地の描写は美しいものが多いです。ある土地は私の実家の近くなのですが、そこは私にとってはなんでもない場所でした。ですが、この本につづられている描写を読むと、ものすごく行ってみたい土地のように描かれています。実際に見て、訪れたことのあるあの土地が著者の魔法にかかって、何だか素晴らしい場所へと変貌を遂げているのです。

 

そういった風景描写もまた寂しさの溢れるものであり、作品をより一層しんとした次元へと押し進めている気がします。 とにかく本に漂う寂しさについて書いてきました。そんなに寂しい本なら読みたくない、と思う方もいるかもしれません。でも、寂しいだけではなくそこには人が人を思う強さ、優しさ、そんなものが根底に流れている作品です。大人の寂しさを味わいたい方はぜひ読んでほしいです。" カンタンな自己紹介・プロフィール 35歳、女性、東京都在住、夫と子供と三人暮らし、妊娠八か月の専業主婦

あなたが良いと思った小説と著者名を教えてください

江國香織 神様のボート

なぜ、その小説を読むことになったのでしょうか?

もともと江國香織は姉が好きで、おもしろいよ、と勧められたのは「きらきらひかる」でした。読んでみたら確かに面白かったので、別のものが読みたいと思って手に取ったのがこの本でした。

その小説を読んで良かったと思う感想

一応ハッピーエンドで終わっているはずなのに、読後も自分の中に漂ってくる寂しさが何とも言えません。 日常ではなかなか起こりえない出来事の中に混ぜられた、どこの家にもありそうなエピソード、そういう一つ一つがじわじわと心にしみてくる話です。

その小説がオススメだと思う方は誰?

ラブストーリーが好きな人はいいと思います。もちろん、ラブストーリーがそんなに好きではなくても、子供の成長についても書かれている話なので、誰でも楽しめると思います。 心に何らかの秘め事があって、今でもそれを抱えている人は、その秘め事が自分の中でわーっと溢れてしまうような作品です。時には自分の感情を開放してしまいたい、そんな風に思っている人にお勧めです。

これからその小説を読もうと思っている方へのアドバイス

主人公と娘は旅がらすです。なぜ旅がらすなのかは、本を読み進めていればすぐに明らかになるのですが、その理由が何とも悲しいです。主人公は何をしていても、常に悲しさ、寂しさがまとわりついている生活を送っています。それはもちろん自分が招いたこととして本人は受け止めていて、本人は一つのこと以外は寂しいとは思っていないのかもしれません。その寂しさは、普通の生活を送っている場合ではなかなか体験することのない種類の寂しさだとは思いますが、似たような寂しさは大人になれば誰しも一つは持っているものだと思います。そういう普段は自分の心の奥に閉じ込めているような寂しさをえぐり出されるような作品です。私は実際に何度もこの作品を読み返していますが、読み返すたびに、心の底に蓋をしてしっかり閉じ込めているある寂しさが全開になってしまい、読後2,3日はその寂しさを抑えるのに大変になってしまいます。大変だとわかっていても、それでもなお何度も読み返したくなってしまうという、大人が寂しさを体感するための本だと思います。

 

ですが、一冊丸ごとそういった寂しさだけで埋められているわけではなく、また別の寂しさもちりばめられています。それは誰しもが体験した「成長」です。子供から思春期を経て、大人へと成長していく過程もまた描かれています。子供のころは自分にとって絶対だった母が、成長してゆくに従って欠陥もある一人の大人なんだと気付き、その親とこの先どのように接していけばいいのか、親との意見が異なっている場合、誰しも悩むところなのではないでしょうか。その子供が親に対して愛情を持っていれば持っているほど、そういった親との接し方、というものに悩むものだと思います。この本に出ている子供もまさにそうで、親をできるだけ傷つけず、でも親の作った世界から出ていこうとする、そこにもまた寂しさが描かれているわけです。 子供の成長が描かれていると同時に、主人公の思い出も作中に多くつづられています。家族の中で「姫」のような存在であり、両親にとって宝物としての存在でしかなかった自分。そんな自分が親を悲しませているわけです。子供は多かれ少なかれ、親を失望させることもあると思います。私も様々な局面において、数多くの失望をさせてきたと思います。親が願う通りに生きていけない自分、親から自由になりたいと願う自分、そんな自分がかつて存在していたことも忘れて、自分の子供には自分の願うように生きてほしいと思ってしまう自分。

 

歴史は繰り返す、ではないですが、親と子はそうやってずっと続いていくものなのでしょう。そんな親子の話もつづられています。 寂しさはそこかしこに漂っていますが、旅がらすである親子、移り住んだ土地土地の描写は美しいものが多いです。ある土地は私の実家の近くなのですが、そこは私にとってはなんでもない場所でした。ですが、この本につづられている描写を読むと、ものすごく行ってみたい土地のように描かれています。実際に見て、訪れたことのあるあの土地が著者の魔法にかかって、何だか素晴らしい場所へと変貌を遂げているのです。そういった風景描写もまた寂しさの溢れるものであり、作品をより一層しんとした次元へと押し進めている気がします。 とにかく本に漂う寂しさについて書いてきました。そんなに寂しい本なら読みたくない、と思う方もいるかもしれません。でも、寂しいだけではなくそこには人が人を思う強さ、優しさ、そんなものが根底に流れている作品です。大人の寂しさを味わいたい方はぜひ読んでほしいです。

 

カンタンな自己紹介・プロフィール

35歳、女性、東京都在住、夫と子供と三人暮らし、妊娠八か月の専業主婦