みんなのエンタメレビュー

感動した映画や面白かったドラマなどを掲載しているブログとなります。

おすすめのミステリ小説「「叫びと祈り」」

スポンサーリンク

あなたが良いと思った小説と著者名を教えてください

「叫びと祈り」梓崎優

なぜ、その小説を読むことになったのでしょうか?

その年のミステリのランキングで軒並み高順位を獲得していたからです。 新人作家でありながら巧みな構成力と精緻な文章力、とのことで、 プロの作家からの評価だけでなく一般の人の感想でも良い感想が多かったので、 かなり気になってきたので、読んでみることにしました。 私はわりと新人の作家さんの受賞作を好んで読むことが多いのですが、それはなぜかというと、やはりなにがしかの新鮮な感覚をえられるからです。

 

新人だからこその 詰めの甘さとか、そういったものは感じることもありますが、そういった不満よりも新しい作家が創りあげようとしている物語を知りたい、という思いが強いのです。そしてこの作品はとりわけ、そんな良い評価ばかりでしたから、これは読書好きな私としてははずすことが出来ない作品だと思えたのでした。

その小説を読んで良かったと思う感想

読んでみると最初の一編は特に確かに意外性に満ちた、巧いミステリだと納得できました。 たくらみに満ちた意外性と、鮮やかな着地点。なぜこのようなシチュエーションなのかについてさえもひとつもムダのないスマートな短編で、受賞は当然と思えました。これをまっさらな状態で読めた審査員はしあわせだなあと思えたくらい、清冽な一編でした。アイディアは前人にないものとまでもいわなくとも、このようなかたちで生かしたことの巧みさのほうが素晴らしいと感じたのでした。 そしてこの一冊全体を通して、新人作家とは思えないくらい文章も巧く、叙情性に満ちた筆致でとても読みやすいのも驚きでした。比喩も美しく、見たことのない異国の風景を思い出せるくらいのリアルさもありました。 その流れるような文章で、驚くばかりの展開を次々に繰り出してくるのですから、凄いとしかいいようがありません。新人賞はそれはもちろん取るでしょうし、ミステリランキングに入賞して然るべき、とまた納得えす。 この小説はひとりの日本人を主役に、さまざまな国で遭遇する出来事をつづるという連作短編集の形を取っているのですが、それぞれの短編には意外性とともに、「その場所でしか成立しない謎と答え」が歴然としていることにこだわりを感じます。日本ではなく異国を舞台にしたものばかりなので、最初はとっつきにくいところはあるのですが、なぜその国なのか、その人物なのか、が謎の解明とともにすべてが腑に落ちるので、深く納得できるのです。その理解とともに生まれる爽快感はミステリの醍醐味であり、また、物語の根本的な面白さを担う大事な要素でもあると思いました。 短編のなかでも「叫び」はかなり異色の作品で、かなりインパクトも強い短編だと感じました。読んだあとにわかる、たった二文字の単語が示すその絶望の深さは、読み手の心をえぐるほどでした。こんな動機があってたまるか、ありえない世界でどうかあってほしい、という恐怖にとらわれたのでした。 そのお話だけで終わったらいわゆるただの「イヤミス」ですが、対になる「祈り」で幕を閉じているのでまだ救われる気分になります。まるで自分の常識に及ばない出来事に出会っても、自分を取り巻くやさしさ、暖かさは間違いのないものだということを感じ取り、安心して本を閉じれるので、読後感はそう悪くありません。

その小説がオススメだと思う方は誰?

ある程度ミステリを読みなれている人のほうにどちらかといえばおすすめしたいです。 読めば、まだまだミステリの裾根は広く、いろんな可能性があるんだと感じられるからです。ミステリの醍醐味といえば驚き、意外性ですが、それにストレートにいどんだ力強い純粋な作品だとも感じますので、ぜひ楽しんでもらいたいなと思うのです。

 

また、普通に「ここにはないどこかで起きた物語をつづる小説」としても面白く読めますので、あまり血なまぐさいきな臭い話は嫌だという人以外には、幅広く読んで欲しいと思います。だまされるのが嫌だ、という人にも勧められませんね。話の中には幻想味に飛んだものや倫理観に挑んだものもありますので、異なるテイストで一冊読んだという充足感もひとしおではないかと思えますので、ぜひ実際に読んでもらって体験してほしいなと考えます。

これからその小説を読もうと思っている方へのアドバイス

私はクチコミを色々とチェックしたうえで読んだのですが、できればあまり事前情報を知らずに読んだほうがより楽しめるかと思います。 根本的なネタバレはあまりなくても、話の持つニュアンスだとかはどうしてもわかるので、まっさらな状態に近いほうで読む方が、より驚きと感動を得られるのではないかと私は思います。 連作短編の形をとっているのでそれもまた読みやすさがあります。少しずつでも読んでいって、満足と感動を共有してもらえればいいな、と感じます。

 

カンタンな自己紹介・プロフィール

30代女性、会社員。配偶者と二人暮らし。大阪府在住