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希望と再生の物語「KYOKO」

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あなたが良いと思った小説と著者名を教えてください

「KYOKO」村上龍

なぜ、その小説を読むことになったのでしょうか?

 今となっては、詳しいきっかけはもう覚えていないのですが、当時のハードカバーの表紙が素敵だったのと村上龍の久々の新刊ということで手にとったように覚えています。やはり日本文壇界における二大巨匠なので、両村上(村上春樹村上龍)の作品はついチェックしてしまいます。あとは、年若い女の子がヒロインというのも村上龍の小説ではけっこう珍しかったので。

その小説を読んで良かったと思う感想

 とにかく感動して泣けます。私は涙もろいので、ティッシュを何枚も使って鼻をかんだくらいです。この作品は村上龍監督によって映画化もされています(ヒロインは高岡早紀。可愛いし、バレエを長く習っていたのでこの役にピッタリでした!)。  一言で言うと、KYOKOという日本人のダンサーの女の子が、自分の恩人のためにアメリカを車で横断するロードムービーです。道中、困難がたくさんあるのを乗り越えて希望的なエンディングを迎えます。何がそんなに泣けるかというと、ヒロインが恩義を感じている人に対してとても真っ直ぐで、感謝の気持ちをずっと長い間持ち続けていて、それを形にしようとする姿勢に感動するのだと思う。

 

そういうメンタリティは非常に日本人的だけど、KYOKOの凄いところは・・・自己犠牲的な押し付けがましさがないところ。だから、お涙頂戴的な雰囲気は一切なくって、それゆえに泣けるのです。  小説はチャプター毎に分かれており、各章、彼女と出会った現地のアメリカ人たちの視点から描かれているのですが、KYOKOの描写がとにかく美しく清冽です。徹頭徹尾、ひとりの女性として外見も内面もとても理想的な人物として描かれています。

 

ダンサーである彼女の動きや美貌はもちろん、自然体な生き方、物の考え方、性格などの描写が素敵で、こんな女性が現実にいるのはとてもあり得ない気がしますが、著者の筆力の賜物なのかどこかリアルです。彼女によって周りの人がどんどん感化され、救われていく様子がまた素晴らしい。村上龍の書く小説は、どちらかというとエロだったりグロだったり、読後感がハードな範疇に含まれると思うのですが、この作品にはそういう要素がないのがとても珍しいです。読後感がとても爽やかで読んでよかったと感じる作品です。 KYOKOみたいな心をみんなが持てたら、世界が平和になるのではないかと思うくらいです。

その小説がオススメだと思う方は誰?

 最後は感動的なエピローグで締めくくられるし、エログロ描写がなく文句無しに美しい物語なので、すべての老若男女にお勧めします。KYOKOの信条や生き方を例えるなら、現代版・世界基準の「やまとなでしこ」。これぞまさしく、柔よく剛を制す!!  女性の持つ、内面の美しさについて考えさせられる作品ですので、特に若い女性・・・高校生くらいの年代になるべく読んでほしい小説です。日本女性には明るい未来があるのではないかなぁ、こういう信念を持った生き方ってとても素敵だなと素直に思えます。  

 

また、ヒロインのKYOKOがダンサーですので、共通性のある職業に就いている方にもお勧めします。単に踊りを生業にする人という狭いカテゴリーだけではなく、自分の「内面を何かで表現する」というたぐいのお仕事をしている方なら、文筆業でも物を作る仕事でも、とても共感できる面があるかと思います。自分の内にあるものを表現しなくてはならないお仕事の場合、内面を磨いたり成長したりすることがストレートに作品に反映されるからです。

 

KYOKOのダンスはその点でも、踊りを見た人全員が彼女の内面に触れる体験をしており、見るだけで感化される性質のものでした。  また、KYOKOみたいな内面も外見もパーフェクトに美しい女性というのはなかなか現実には存在しません。そういう意味で男性にとっては、物語の中だけでもこういう理想の女性に出会える作品だとも思います。

これからその小説を読もうと思っている方へのアドバイス

 私はふだんから音楽を聴いたり演奏したりすることがとても好きで、特にジャズが好きなので、キューバのダンスミュージックを扱った「KYOKO」はその面でも魅力的な作品でした。今までは正直、キューバ音楽というジャンルは知ってはいましたが、きちんと聴いたことはありませんでした。この物語は、KYOKOがキューバン・ダンスを恩人のG.Iから習うことがストーリーの発端になっています。作中、たくさんのキューバ音楽のタイトルが出て来てどうしても気になってしまったので、私は映画のサントラ盤を買いました。どこか切なく、やるせないキューバ音楽を聴きながら読むことで、いっそうこの物語の世界の理解が深まることでしょう。  

 

カンタンな自己紹介・プロフィール

アラフォー独身女性。転職回数が多い専門職で北海道出身&在住。家族とは別居で一人暮らし。大学では日本文学を専攻。最近は文学より専門書やビジネス書を読むことが多い。好きな作家は太宰治山田詠美窪美澄など