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みんなのエンタメレビュー

感動した映画や面白かったドラマなどを掲載しているブログとなります。

村上龍『五分後の世界』がお勧めです

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あなたが良いと思った小説と著者名を教えてください

村上龍著『五分後の世界』です。

なぜ、その小説を読むことになったのでしょうか?

もともと村上龍のファンであり、横尾忠則による装丁が独特で綺麗だったこともあり、手に取りました。

その小説を読んで良かったと思う感想

東京でアダルトビデオの制作会社を経営する小田桐は、いつもと代わりのない生活を送っています。怠惰で堕落した緊張感を欠いた生活です。 そんな生活を送る小田桐がふと気付くと、なぜか泥濘の中を歩いているのです。周囲を見ると、ゆるやかな隊列が組まれ、一方向に淡々と進んでいます。小田桐が時計を見ると、なぜか5分だけ、時間がずれていたのでした。 『五分後の世界』の物語はこのように始まります。

 

隊列が到着した先は、検問所のようなところで人々はそこで面接を受けています。小田桐はそこで面接官でそこで様々な質問を受けるのですが、不審人物と怪しまれ、いったん留置所にいれられるものの、そこから出されることになります。正確な日本語を話していることと、不思議な紙幣を保有していたことからです。 釈放された小田桐はある人物と面会し、この世界について学ぶために教科書を与えられます。 この作品が優れているのは、そこで明らかにされる世界設定です。 日本は第二次世界大戦で降伏せずに徹底抗戦を続けています。その結果、広島長崎以外の複数の都市に原爆が投下され、日本はアメリカのみならずソビエトやイギリス、中国に分割統治されています。

 

皇室はスイスに亡命し、日本の人口は25万人程度に激減しつつも、長野を中心とした地下に都市を形成し、20世紀後半も戦闘を続けているのです。 戦闘国家日本はアンダーグラウンド(UG)と世界から呼ばれており、日本軍はUG軍として世界最強のゲリラ技術を持つ軍隊として恐れられています。UG軍は優れたグレネードランチャーを装備し、兵士一人一人の技量がずば抜けていて、キューバ革命に派遣されていたりするのです。 UG軍の能力が優れている場面は、作品前半のクライマックスで詳細に描写されます。

 

未だ、自分がいるのがどこか理解出来ていない小田桐は、隊列を組んで移動している最中に、戦闘に巻き込まれます。 どこからか現れた少数のUG軍兵士が、アメリカ軍のライフルなどを小田桐達に手渡し、塹壕を掘るように命じると、すぐに消えてしまいます。戦闘が迫っていることを知った周囲の人々は必死に塹壕を掘り続け、小田桐はそれに倣います。 前方の方で爆音と火炎が上がり、迫撃砲やナパーム弾の攻撃がなされていることを小田桐は知り、必死に後退しながら迫るアメリカ軍に応戦しつつも、その限界を悟ります。 その時、周囲から金属的な音が空間を切り裂いて、前方のアメリカ軍の車両が爆発するのです。 小田桐がその爆発に気を取られていると、知らない間に周囲にUG軍の兵士達が展開を終えていて、反撃に転じているのです。 著者の村上龍は、徹底してUG軍兵士の動きについて描き込んでいます。

 

小田桐を始めと戦地に送り込まれた人々は、UG軍がやがて救援にくると予告されているものの、それがいつなのか、どのようにくるのか知らされていません。したがって、彼らはかすかな希望を持ちつつも、アメリカ軍相手に絶望的な戦いを繰り広げなければならないのですが、このUG軍に対する期待と羨望、そしてUG軍が到着してからの圧倒的な反撃戦の模様が克明に描き込まれています。 村上龍美術大学出身の作家であり、映画監督でもあるためか、描写能力がすさまじく、この戦闘シーンを読んでいて、映像が自然に頭に浮かんでくるように書かれているのです。 おそらく日本語で書かれた戦闘シーンとして最高のもので、一読する価値があるものです。

 

このような精緻な戦闘シーンが活字として書かれていることに、驚きを抱いてしまうのです。 他にも興味深い様々な設定があります。 階級制度が導入され、純粋な日本人は少数で、準国民や非国民とよばれる人々が存在すること。準国民は日本国民になりたいという意志を持っている移民の人々で、戦闘行為への参加といった日本への貢献が認められれば国民になれるとされています。 またUGの収益源は「向現」と呼ばれる、高性能の麻薬であり、この「向現」の作用がUG軍の強さにもつながっていること。

 

さらにワカマツと呼ばれる世界最高峰のピアニストが日本人であり世界的な活躍を見せていたり、日本は国際社会から追放されオリンピックへの参加は認められていないものの、事実上マラソンの世界記録を持っているのが日本人であること、などです。 また物語としては、平凡な生活を送っていた小田桐が次第にUGに惹かれ、UG軍と共に過ごしていくうちに闘争の意味を悟り、最終的には一人の兵士となる、という成長物語としての側面もあり、優れた完成度を伴った作品に仕上がっています。 『五分後の世界』優れた描写の連続で物語展開も面白いため、いったん読み始めたら退屈することなく最後まで一気に読みすすめることができる作品です。

その小説がオススメだと思う方は誰?

作品には多くの戦闘シーンが描かれているため、男性向きの小説です。また作品内では「強い日本」が描かれてます。したがって日本が好きな方にお勧めできると思います。

これからその小説を読もうと思っている方へのアドバイス

この作品には続編の『ヒュウガ・ウイルス』があります。この作品を面白く感じた方は、『ヒュウガ・ウイルス』も読まれると良いと思います。