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みんなのエンタメレビュー

感動した映画や面白かったドラマなどを掲載しているブログとなります。

ほろ苦い青春時代を喚起させてくれた名作「春一番が吹くまで」

小説
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あなたが良いと思った小説と著者名を教えてください

小説のタイトル:春一番が吹くまで 著者名:川西蘭

なぜ、その小説を読むことになったのでしょうか?

大学学生の頃、よく出入りしていた書店が「新人作家鮮烈デビュー」といった感じで同タイトルの本をポップでPRしていました。 しかも多少、記憶が定かではありませんが、確か川西蘭氏は早稲田大学の学生時代に作家デビューを果たしたといった紹介がされており、その点でも同じ学生という立場で親近感を憶えました。

 

それで、さっそく手にとってその本を立ち見したところ、高校生が夏休みに東京お茶の水にある大手予備校の夏季講習に通うことから本格的にストーリーが展開することがわかり、受験に向けて大手予備校に通っていた自分の経験が蘇り、その続きがむしょうに読みたくなりすぐに購入したというのがきっかけです。 従って、予め同タイトルの書評を読んで情報を得ていただとか、作家の川西蘭氏を知っていたといったことはありませんでした。

その小説を読んで良かったと思う感想

主人公の高校生は広島から上京し、お茶の水にある大手予備校の夏季講習に通うことになりますが、そこで奔放のようにみえてナイーブ、そして心のどこかに傷を負ったような不思議な女性ユウコと出会います。そのユウコと主人公のちょっぴりほろ苦く切ない、一夏の恋を描いた恋愛小説です。 しかし、作家が男性であったこともあり、男性の目線で彼女に寄り添い、多少翻弄されながら愛する女性を精一杯自分なりに受けとめようとする高校生の心情が実にうまく表現されていたことと、受験生という立場ながらささやかな恋愛を経験した記憶がオーバーラップして、恥ずかしながら読んでいて男心ながら記憶と共に切なさや胸が締め付けられるような思いがこみ上げてきました。

 

しかも、この小説はページ数で約100ページのどちらかと言えば短編小説と言って良く、だらだらくどくど心情表現されたり、間延びしたストーリーで繋ぐといったことは一切無く、上京した高校生が予備校の夏季講習に通うその短い期間での出来事として描かれていますので、時間軸が複雑前後すると言ったことが無く大変読みやすいストーリー展開となっているので、その分、感情移入等しやすい点も良かったと言えます。 勿論、短い期間での出来事で平易なストーリーだからと言って、底の浅い小説ということではありません。

 

登場人物も本当に限られていますが、その登場人物の台詞から覗ける人物像や背景等は実に巧に描かれており、もし自分が恋愛小説を書くとすればこの著者である川西蘭氏をお手本にしたいと思いました。 また、同小説の単行本には「ブラックボックスを背負って」というもう一本の短編小説が収められていましたが、この小説も実におもしろかった!。本当に2編で満足出来ました。現在「春一番が吹くまで」を文庫本等で購入されるなら、その「ブラックボックスを背負って」が収録されているかはわかりませんが、購入時に目次を確認し、もし「ブラックボックスを背負って」も 含まれているようでしたら、そちらもぜひ楽しみにしておいて下さい。

その小説がオススメだと思う方は誰?

まず、高校生には絶対オススメしたい小説です。会話すらラインが中心で言葉を交わすという機会がめっきり減ったように大人から見て思えますが、この小説が描かれた当時はスマホは勿論、携帯電話すら普及していない時代でした。 しかし、男性と女性が恋に落ちて、短い時間であったとしても、二人でその関係を育んでゆこうとした時にどうすれば良いかは、今も昔も変わりはないと思います。どうか、この短く切ない一夏の高校生達の恋愛小説を読んで欲しいと切に願います。 また、高校生以外では高校生時代に予備校の講習会へ参加して、見知らぬ他校の女の子に恋心を寄せた経験があるといったお父さん世代の方にもオススメしたと思います。

これからその小説を読もうと思っている方へのアドバイス

言ってみれば、青臭く、少し危なっかしく、荘厳さといったこととは無縁なライトな感覚も内包した恋愛を描いていますので、それ程難しい小説ではない反面、少しくすぐったくなるような感想を抱かれる方もいると思います。 しかし、この小説が描かれたのが1979年は日本が迎えるバブル景気の前夜の時代でもあり、多くの国民が「あすなろ」即ち今日よりも明日はもっと豊かになれると信じて、良い意味での上昇志向の志の元、経済が発展する中で「もっと、もっと」を目指しして必死にもがいていた時代とも言えます。 この小説は、そんな時代背景に多感な高校生という時代を迎えた青年のラブストーリーであり、そうした時代背景に少しだけ思いを寄せて読んで頂ければ、その青臭く感じられる高校生の言動にもきっと共感出来るようになると思います。

 

カンタンな自己紹介・プロフィール

性別:男性、 年齢:50代、家族構成:夫婦と子供1人の3人家族、都道府県:神奈川県です。