みんなのエンタメレビュー

感動した映画や面白かったドラマなどを掲載しているブログとなります。

一気に読める百田尚樹の「影法師」

スポンサーリンク

あなたが良いと思った小説と著者名を教えてください

百田尚樹さんの「影法師」です。

なぜ、その小説を読むことになったのでしょうか?

たまたま、次男が買ってきて、家にあったからです。

その小説を読んで良かったと思う感想

作者は、関西圏では人気長寿番組「探偵ナイトスクープ」の構成作家を長年務めておられるという(関西では?)華々しい経歴の百田尚樹さんです。何年か前から小説も発表されるようになり、話題になっていたのに読んだことがありませんでした。最近は自衛権南京事件についてコメントしておられたりで、また少し印象が違ってきていました。

 

そうした印象とはまったく違う、すがすがしい印象を一気に読み終わって受け取りました。 主人公の勘一よりも、影の主人公の彦四郎がかっこ良すぎて、本の題名が「影法師」なのも納得です。「永遠の0」が映画化されたように「影法師」も映画化されたなら、彦四郎役の俳優さんに恋してしまう女性が大勢出て来ると思います。 主人公の勘一はコツコツ努力の人でもあったけれど、彦四郎のようなすばらしい友人を得ることができた幸運が、彼の人生を出世コースのトップまでぐっと押し上げてくれたことが読み進めるとわかってきます。現実の話ではない、小説なのだと思いつつも、良き友がいることはこんなに幸せなことかとつくづく思います。

 

その一方で、彦四郎にはもっと違った選択肢があったのではないのか、頭のよい彦四郎がもっともっと考え抜けば、何か違う生き方で彦四郎も彦四郎が大切に思う人も幸せになれたのではないのか、と読み終わってからずっと考え続けてしまうのに答えは見つかりません。あんなに頭のよい彦四郎が考え抜いた末の行動なので、やはり他の道は無かったのだと納得するしかないのでしょうね。 江戸時代には、その身分制度のせいで、武家家督を継げる長男に生まれなかった次男以下の男性は、男子のいない家に養子に行く以外には一生結婚もできず、「部屋住み」という何もできない身分のままに終わることをこの小説で知りました。そんな身分制度のない今の時代に生まれた私たちは幸せです。

その小説がオススメだと思う方は誰?

江戸時代の時代小説なので、もちろん時代小説がお好きな方にオススメです。 主人公の勘一は、藩の中では武士でも「下士」と呼ばれる身分の家に生まれました。そして、勘一の父親は、「上士」と道ですれちがうときは「下士」はたとえぬかるんだ道でも土下座してひざまずかなければいけないという藩の決まりを守るのを一瞬ためらった勘一の幼い妹が上士にお手打ちにされそうになったのを守るために斬られ、勘一と妹の目の前で死んでしまったのです。もちろん藩侯にお目見えもかなわない下士出身の勘一が、江戸家老や筆頭国家老にのぼりつめる出世話でもあるので、そういうサクセスストーリーが好きな人にもオススメです。 ですが、一番のオススメは、ふだん時代小説を読まないような女性、特に、甘いラブ・ストーリーがお好きな人にオススメです。意外に思われるかもしれませんが、あるいは全然意外じゃないかもしれませんが、「影法師」はれっきとしたラブ・ストーリーなんです。涙腺の弱い人だと読み終わった後、泣けて泣けて仕方ないと思います。

これからその小説を読もうと思っている方へのアドバイス

今から読もうと思って「影法師」を購入されるなら、文庫本がオススメです。なぜなら、単行本には収録されなかった「終章」が巻末に袋とじされているからです。文庫本の一番最後、奥附よりもまだ後ろにです。 文庫本によりますと、「影法師」は「小説現代」に連載されていたのですが、2010年の「小説現代」4月号に載せられた連載最終回の「終章」は、その年5月に発行された単行本には収録されませんでした。 連載の最終回の収録を待たずに単行本を発行するなんて乱暴な感じもしますが、「終章」の内容自体は、そこまで読んできた読者には書かれていなくても読み取れていた事情をはっきり明文化したような内容、「言わずもがな」な部分なのです。

 

読む人によっては、「終章」で書かれていることは読み取れていたので、そこまではっきり書かれない方がよかったと思う人もおられるかもしれません。あるいは、はっきり書いてもらってよかった、彦四郎の気持ちがそこまでは読み取れていなかったという人もおられるのかもしれません。 「終章」が無ければ男性向けの時代小説、「終章」をつけることで一気に女性向けのラブ・ストーリーになるような気もします。わざわざ文庫本では袋とじにしたのも、「お好きな方でどうぞ」と読者に選択の余地を残したということかもしれませんね。 でも、「袋とじ」が好きなのは圧倒的に男性のように思いますから、「袋とじ」をドキドキしながら切り開いてみて、女性的な展開にがっかりする読者が多いかもしれません。

 

カンタンな自己紹介・プロフィール

関西人、50代後半の専業主婦です。