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みんなのエンタメレビュー

感動した映画や面白かったドラマなどを掲載しているブログとなります。

京極版必殺仕事人「巷説百物語」

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あなたが良いと思った小説と著者名を教えてください

京極夏彦著「巷説百物語」シリーズです。とくに「後巷説百物語」が一番好きですね。 京極夏彦先生は妖怪を題材にしながらも「この世には不思議な事など何も無いのだよ」と断言する憑き物落とし、京極堂を主役としたミステリー小説「京極堂」シリーズが代表作でありますが、巷説百物語シリーズはそこにかなりのエンターテイメント性を強くした時代劇作品です。 時は江戸時代。考え物の物書きをしつつ、全国に散らばる魑魅魍魎、妖怪化け物のお話を蒐集することを趣味として旅をする百介先生が、ひょんなことから又市一味と出会い、世にも不可思議摩訶不思議な仕掛けによって、この世の理、お決まりではどうにもならなくなった事態を四方万全丸く収める数々の事件に関わっていく――というストーリーです。

 

一つ一つは読みきり短編なのでさっと読めて、その短編一つ一つは言わば「必殺仕事人」的な天下の裁きでは裁けぬ悪を、外法によって裁いてみせる、というノリであり、カッコ良く爽快なシリーズになっており、京極先生の作品の中でも飛び抜けて読みやすい作品です。 またその仕事をする連中がどうあがいてもやくざ者ばかりのくせ者揃いであり、一口に勧善懲悪でないところも魅力。「妖怪」に憑かれた人々の多くはただの外道、悪党ではなく自分の中に巣食うモノを飼い慣らせなかったばかりに悲劇の連鎖を生んでしまったということが多いのです。

 

そういった人々を、私情を全く見せずに仕事として片付ける又市さんですが、そんな彼がただ一人心を許し、時に本音や弱音を漏らした百介先生との友情、その結末もまたこのシリーズの魅力と言えるでしょう。 人の心の闇を暴き、闇から闇へと葬る仕事人。ちょっとチープでとびきりに痛快。わかりやすく、そして少し切ない時代劇。それが巷説百物語シリーズです。

なぜ、その小説を読むことになったのでしょうか?

これはネット上での友人からオススメされました。どういう経緯だったかは忘れましたが、私が妖怪好きだということから薦められたような気がします。 折り良くアニメ化されていた時期だったので、入手しやすかったです。 ちなみにそのアニメ、京極先生本人が声優として出演しています。ノリノリすぎやろこの先生。

その小説を読んで良かったと思う感想

京極堂シリーズでも似たようなところはありますが、この作品の大きな特徴は「どうにも立ち行かなくなった状況を、全て妖怪の仕業ということにして解決する」というところにあります。 妖怪は化け物で人間でないので、悪いことを全ていもしない妖怪の仕業ということに押しつけてしまえば、業を無駄に背負う者が出ることを抑えられ、負の連鎖を断ち切ることができます。 そのため、又市一味は妖怪の仕業と見せかけるため人智超越の出来事に見える、タネも仕掛けもある仕掛けをしていくことになります。

 

それを推測するのも楽しみの一つですが――まぁ、デビュー作京極堂シリーズの根幹の仕掛けがアレだったので、あまり大真面目に読まないでください。そこらへんの荒唐無稽含めて楽しむのがたぶん誰にとっても幸せです。乳母車に機関銃仕込んで乱射するのが日本の時代劇なんだからその魂を正しく受け継いでいると! 私個人的な感想ですが「仕掛け」のギミック的に一番好きな作品は「舞首」ですね。首無し死体は当人の死体ではないと疑え、というのがミステリー小説の基礎ですが、そこに踏まえてもう一段階踏み込んだ、単純だけどしてやられやすいトリックが見事です。

 

また、やられた悪人どもがこの作品にしては珍しく文句なしに根っこからのド外道ばかりなので大変痛快。 ストーリー的に一番好きなのは「風の神」となるでしょうか。時系列的にも巷説百物語最後の作品となり、この作品の締めとしてふさわしいと言えます。実際には続編として「前巷説百物語」「西巷説百物語」が出ましたが、やはりこの作品の終わりはこれで締めるべきでしょう。 「風の神」は江戸時代から明治へと移り、一つの幻想の時代が終わったことを告げる物語です。その最後の幻想が見せる「この世ならざる者」は大変、大変小さなものでありまして……。

 

最後の最後まで小市民的ながら情深く優しかった百介先生と又市さんとの友情が、時代の終わりと共に語られることで大変に美しい。 この、百介先生と又市さんという語り部に仕掛け人という二人の主人公は、正に光と闇、人と妖怪に憑かれることの境界の関係でもあります。二人はお互いがお互いに自分に持っていないものを相手が持っていることを尊び、喜び、語らい合っていた。しかしその関係は短くも終わり――でも、禍根は残さず、憑き物とはならず、ささやかな奇跡のようなものを残して終わる。 京極夏彦先生が持つ、妖怪という幻想への理想像が語られているような気すらしてきます。

その小説がオススメだと思う方は誰?

京極夏彦作品が読みたい、痛快な時代劇が読みたい、という方にオススメします。 最初に書いた通り、京極作品の中でもかなり開き直ったエンターテイメント作品なので、非常に楽しみやすく取っ付きやすいと言えます。

これからその小説を読もうと思っている方へのアドバイス

個人的に読む順番は「巷説百物語」→「続巷説百物語」→「前巷説百物語」→「西巷説百物語」→「後巷説百物語」という順番がオススメです。 出版順から、後を飛ばして最後に持ってきただけですが、たぶんこれが一番読後感「読み終えた!」感が得られる順番じゃないかな、と。

 

カンタンな自己紹介・プロフィール

独身・男・28・フリーター・近畿在住