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小渕健太郎の「おふくろさん」~コブクロ「蕾」の真実

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なぜ、その歌が良いと思ったのでしょうか?

コブクロの「蕾」を、テレビの歌番組で初めて聞いて、「いい!」と思いました。私は彼らのほとんど親世代。もちろんコブクロのことは知っていましたし、「ヒューマンな、やさしいデュオ」として、気にはなっていました。けれど、それまで特に強く意識したことはありませんでした。 その番組で彼らの歌う「蕾」を聞いて、コブクロに初めて強く心打たれたのです。

 

すぐに、CDを購入。しかし、私は決定的な勘違いをしていました。若いアーティストの歌う曲はほとんどすべて「ラブソング」だというのが、私の悲しい先入観。ですから、この曲も「恋人が亡くなって、その思い出を綴る男性のラブソング」だと決め付けて「いいなあ」と思いながら聞いていたのです。 今にして思えば、ほんとうにうかつでした。この曲は、テレビドラマ「東京タワー~オカンとボクと、時々オトン~」の主題歌であることも知らなかったのです。

 

私が、「ラブソングではなく、亡きお母さんへの思いを歌った曲」と認識したのは、その年の「日本レコード大賞」でした。 この曲はレコード大賞を受賞したのですが、そのとき、曲を作った小渕健太郎が、18歳の時に亡くしたお母さんのことを話し、「(母と)一緒に歌っていた気持ちがすごく強かった」とコメントしたのです。それでようやく私は「なるほと、そういう曲だったのか」と納得しました。 そういわれてみれば、最初から確かに、「違和感」は感じていました。たとえば冒頭の歌詞、「涙こぼしても 汗にまみれた笑顔の中じゃ 誰も気付いてはくれない だから あなたの涙を僕は知らない」。

 

これは、「亡くなった恋人のこと」という想定では、明らかにおかしい。男が恋人の「汗にまみれた笑顔」を思い出す、というのは、かなり特殊な状況でしょう。 「柔らかな日だまりが包む背中に ポツリ 話しかけながら」というのも、恋人にしては変です。それに、うかつな私は気づかずに、「いい曲だなあ」と思っていたのです。 それが、レコード大賞受賞を機に、「東京タワー~オカンとボクと、時々オトン~」の主題歌であることを知り、小渕氏のコメントを聞き、「亡き母への追悼曲」であることをようやく認識したのでした。

 

紅白歌合戦での彼らの熱唱を、まったく新しい気持ちで聞きました。そして、涙が出ました。私も、その10年前に母を亡くしましたし、小渕氏がお母さんを亡くされたのと同じ年代で、父を亡くしているのです。 「聴こえないがんばれ」というフレーズには、ほんとうに泣かされました。そして、そのほかの歌詞も、ほんとうにしみじみ、そして強く心を打ったのです。 「信じた夢は咲く場所を選ばない」「僕等 この街に落とされた影法師」など、魅力的なフレーズが目白押しです。中でも私が好きなのは「風のない線路道 五月の美空は青く寂しく」というフレーズ。 「線路道」は苦しい表現で、そんな言葉はないでしょう。「線路沿いの道」を、字数のつごうでやむなく「線路道」としたのでしょうが、それもほとんど気になりません。そして、なにより、あの晴れ晴れとした「五月の美空」を「寂しく」と感じたところに、小渕氏の心の真実があると思うのです。 この曲が「母へのオマージュ」であることを知って、私は自分の経験とも重ねながら、いよいよ「大好きな曲」になりました。そしてその2年後。これもテレビの歌番組で、あるとんでもない大物歌手が、この曲をカバーしたアルバムを発売したことを知ったのです。 それは、演歌の大御所、森進一。彼が出した新しいアルバムに、尾崎豊の「I LOVE YOU」や福山雅治の「桜坂」などとともに、コブクロの「蕾」も収録されているというのです。 私は迷うことなく、森進一のそのカバーアルバムも購入。「蕾」を聞きました。そして、泣きそうになりました。正直、「どうなの?」と思いながら購入したのですが、これがいいんです。そして、私は気がつきました。「なるほど。『蕾』は、小渕健太郎が書いた、いわば彼の『おふくろさん』。それを森が歌えばすてきな歌唱になるのは、むしろ当然なのだ」ということに。 そうです。「蕾」は、十代の多感な時期にお母さんを亡くした小渕健太郎の「おふくろさん」なのです。 今でも私は、カラオケで「蕾」をよく歌います。母のことを思い出しながら。

その歌がオススメだと思う方は誰?

「お母さんのことが好きなすべての人」におすすめします。「森進一の『おふくろさん』はちょっとな」と感じる若い世代の「お母さん好き」なすべての人に。そして、「森進一の『おふくろさん』が好き」という、中高年の人、特に男性に、コブクロ版の「おふくろさん」をぜひ聴いてほしいと思います。

これからその歌を聴こうと思っている方へのメッセージ

とにかく歌詞がすばらしい。私のように「勘違い」しながら聞いてもすばらしかったのですが、ちゃんとその「真意」ををわかって聞けば、その内容の充実ぶりを堪能できるにちがいありません。 深いし、美しい。「五月の美空」なんていう歌詞、今のアーティストが思い浮かぶものとはとても思えません。そうした小さな描写に注目しながら、ぜひ聴いてほしいと思います。

 

カンタンな自己紹介・プロフィール

56歳、男性。埼玉県。夫婦で自営の小売業を営んでいます。夫婦2人家族です。