読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

みんなのエンタメレビュー

感動した映画や面白かったドラマなどを掲載しているブログとなります。

布施明「積み木の部屋」は亡き父の思い出の曲

スポンサーリンク

なぜ、その歌が良いと思ったのでしょうか?

有馬三恵子作詞、川口真作曲・編曲、布施明歌唱「積み木の部屋」。1974年に発表され、大ヒットした、布施明の代表曲の一つです。当時、布施明は人気絶頂期。彼はデビューからずっと売れ続けていましたが、この作品の前後が「ピーク」だったと言っていいでしょう。翌年に「シクラメンのかほり」がヒットし、レコード大賞など、各賞を総なめにしています。 当時私は高校生、16歳でした。もとも布施明は大好きな歌手の一人。彼のデビューは私の子どものころでしたが、よく覚えています。というのも、私の父が大ファンだったからです。 父はジャズやポピュラーなどのアメリカ音楽が好きで、自分でもよく歌を歌っていました。父が好きなる歌手の絶対条件は「歌唱力があること」。

 

声に魅力があり、表現力のある「大人のシンガー」が、父の好みでした。そして、布施明はその条件にもっとも適う日本人シンガーだったのです。 当時、ポップス系の歌手の中で、布施明は「うまい歌手」の代表格。子どもにも「うまい」と判断できる歌唱力の持ち主でした。ですから、私は父の影響を受けて、布施ファンになったのだと思います。「恋」「愛は不死鳥」「霧の摩周湖」「そっとおやすみ」などなど、当時の彼のヒット曲は、今でも私のカラオケの定番ソング。それほど強い印象が残っているのです。 さて、その中で特に「積み木の部屋」が好きなのは、やはり父の思い出の曲だからです。当時、父は46歳。すでに「いいおじさん」という年齢です。その父が「この歌はいいなあ」と口癖のように言っていました。 歌の内容をかんたんに説明しておきます。テーマは「同棲」。若い男女が同棲生活ののちに別れることになった。その思い出とさみしさを、当事者の男が語る、という設定です。 実は、当時は若い男女の「同棲」がブームのようになっていました。劇画の「同棲時代」が大ヒットし、1943年、つまり「積み木の部屋」の前年に映画化、テレビドラマ化され、これもヒット。さらに主題歌の「同棲時代」も大ヒット。というように、世は「『同棲時代』の時代」だったのです。かぐや姫の「神田川」も同じジャンルの曲と言っていいでしょう。 その流れで生まれたのが「積み木の部屋」ということになります。歌詞を一部紹介すると、「西日だけが入るせまい部屋で二人」「君に出来ることはボタン付けとそうじ」「きれい好きな君がみがきこんだ窓」というように、二人の貧しいながら幸せな思い出の生活が描かれています。

 

40代の父はその歌詞を聞きながら、「いいなあ」というのです。特に気に入っていたのが「リンゴかじりながら語り明かしたよね」というフレーズ。「リンゴかじりながら、ってとこがいいじゃないか」と目を細めていました。 当時16歳の私には「同棲」はあまりピンときません。「大人の世界のできごと」というイメージでした。けれど、歌詞の内容はよくわかりますし、フレーズのリリシズムは「すてきだな」と思います。そしてなにより、「リンゴかじりながら」を「いいじゃないか」という父のロマンティストぶりに驚かされたのです。 父は若いころ画家をめざしていた、という芸術家肌なところがありますので、その年齢になっても若い心、若い感性を失わないロマンティストでいられたのでしょう。「積み木の部屋」の時には元気そのものだった父ですが、実はその3年後、49歳の若さで亡くなったのです。

 

死因はガンでした。つまり「元気だった父の最後の思い出の一つ」、それが私にとっての「積み木の部屋」であり、それだけにいまだに、この歌と父の思い出がシンクロしてくるのです。 もちろん、布施明の圧倒的な歌唱力、繊細な表現力は歌の大きな魅力になっていたことはまちがいありません。「愛は続いていたのか~~~」と聞かせるビブラートが大変特徴的な名唱でした。 父は歌も上手かったので、風呂でよくこの歌を口ずさんでいました。布施を真似たビブラートも上手でした。私もカラオケで歌いますが、父のようには歌えません。

その歌がオススメだと思う方は誰?

私と同世代の人なら、思春期や青春の「あの頃」を思い出すなつかしい歌なはずです。 今の若い人は「布施明」といってもあまりピンと来ないかもしれませんが、「日本にもこんな本格的な名シンガーがいる」ということを、この歌を聴いて知って欲しいと思います。もちろん布施明は現役の歌手ですから、好きになればコンサートで生の歌声を楽しむこともできます。 「同棲時代ブーム」は一過性のものでしたが、この歌に描かれている若い男女の関係、みずみずしい感性は、今の若い人でも共感できるものではないでしょうか。

これからその歌を聴こうと思っている方へのメッセージ

まずは、布施明の歌唱力。当時20代の布施がこれだけの表現力で一つのドラマを描ききっているところに、注目して聞いてほしいです。それから、歌詞の内容。先ほど行ったように、若い人には設定がやや古いように感じるかもしれませんが、「わかる、わかる」というところがきっとあるはず。 もし今、恋愛中ならば、自分と恋人の関係をダブらせて聞くと、より心にしみるのではないでしょうか。 普遍、不滅の「青春ラブソング」だと思います。

 

カンタンな自己紹介・プロフィール

56歳、男性。埼玉県在住の自営業者。妻と2人家族です。