池田綾子「空の欠片」が生涯ベストワンの歌です
なぜ、その歌が良いと思ったのでしょうか?
一言で言ってしまえば「すべてが好きだから」という結論ですが 順を追ってご説明します。 この歌は、むかしテレビで放送されていた アニメ「電脳コイル」の中で使われていました。 私自身がこのアニメを観たのはごく最近ですが、 エンディングで流れるこの歌がとても印象的で すぐに好きな曲になってしまったのでした。
この歌の魅力としてまず挙げられるのは 歌い手である池田綾子さんの上手さであると思います。 さまざまな歌手がいますが、池田綾子さんの歌手としての実力は とてつもなくハイレベルで、しかもそれを前面に出さずさり気なくうまい。 嫌味がなくスッと入ってくるのです。それでいて必要な時は 聞き手が唸るほどに上手い! 余談ですが、私が現在最も歌が上手いと思うのがこの池田綾子さんです。
アニメ「電脳コイル」では、オープニングとエンディングの両方を 池田綾子さんが歌っておられるのですが、 番組オープニング曲でのドラマティックな歌い方から一転して、 エンディング曲である「空の欠片」では しっとりとした曲調になり、池田さんの歌い方にも抑制が効いており、完全にコントロールされているテクニカルさも見せながら、 それでいて何よりも、エモーショナルに盛り上がっていく。
聞き手に優しく、語りかけるような声でありながら 思わず気持ちが動かされるような、言うなれば 「歌の力」を感じずにはいられない。そんな池田さんの実力が この曲には余すところなく盛り込まれています。 また、 この「空の欠片」の歌詞自体も、番組の内容と呼応するような 内容であり、なおかつ、番組を離れても、 さまざまな場面で共感を得られるような 普遍的な内容になっています。 そして、この曲が与える印象はとてもポジティブなものです。 この曲の世界観は 中途半端な自己陶酔や、 「信じれば夢はかなう」 「なにも怖くない」的な安易なものではありません。
また、挫折や苦労を知らない、いわゆる「勝ち組」的な 人に向けたものでもありません。 しかし、現実の痛みや苦労や挫折を踏まえながらも 追いかけて、走り続ける時に 自分の周りの人達の 何気ない言葉や笑顔が自分に与えてくれる力を とても大切なものとして描き、それらには 挫折や痛みすら、プラスに反転していく力があることを教えてくれます。 そして、その先には道があり、たいせつに思う気持ちは必ず つながっていることを示してくれます。
曲のメロディーが美しく、印象的な歌詞の力をさらに力強く増しています。決して派手ではない曲調ですが、とても印象的なメロディー。 番組の最後にエンディングとして流れるこの曲が 放送当時に番組を観ていた子どもたちの心にもきっと、 美しい何かを残してくれたのではないでしょうか。
その歌がオススメだと思う方は誰?
池田綾子さんの歌唱力の素晴らしさもあり、万人におすすめと言えますが 特に、「いまリアルタイムで挫折を感じている人」には強くおすすめしたいと思います。 なぜなら私自身がそうで、去年の暮れにリストラされて以来 日々やりきれない気持ちを胸に抱きながら生活してきました。 そんな時に観たアニメ「電脳コイル」の、番組そのものも素晴らしかったのですが、 エンディングに流れるこの曲の、 「辛いことはあるし、挫折もあるけど決して無駄じゃない」 そんな曲の世界観が私自身の報われない辛い気持ちを癒してくれました。
痛みや挫折や不安を抱えて先の見えない生活をただ毎日繰り返していたように感じていましたが、 周囲の人々の温かさや何気ない生活を毎日送ることが出来ることの素晴らしさに この曲を通して気付かされたように思います。 人間が辛い状況に陥ると、どうしても不幸にばかり目が行ってしまい いまの恵まれた環境や人の温かさに気づかなくなりがちですが、 理屈でなく、歌をとおして 「感じさせてくれる」ことが、歌の持つ最も優れた力なのではないかと思います。
これからその歌を聴こうと思っている方へのメッセージ
前述しましたが、池田綾子さんの歌唱力がとてつもなくハイレベルなことと メロディー自体の素晴らしさ、そして深みがありながら押し付けがましさのない歌詞など 様々な要素がすべてといっていいほど高度なので、 感性の繊細な時期の子どもたちから、最近の歌唱力の無い歌手に辟易しているお年寄りまで 万人におすすめ出来ます。特に、私のように疲れている大人の人達に聴いて欲しい。
その上で、この歌の世界観を味わいつつ、 挫折や痛みを感じている人は自分自身を認めてあげるきっかけになれば幸いです。 そして、日常での何気ない生活の中で、 自分にとって大切な人と、きっと心のどこかで つながっている事を思い返していただければと思います。